4月30日に静嘉堂文庫美術館で受講した「十二神将像のひみつ―浄瑠璃寺伝来の一具と運慶」(講師:山本勉氏)の中で、伝浄瑠璃寺の十二神将は4躯を除いて定智本と一致しているとの解説があった。(※5月4日一部訂正: 詳細は「定智本と宝城坊・十二神将」を参照

そもそも定智本とは何か?伊勢原市のホームページ内、いせはら文化財サイト(宝城坊・十二神将のページ)に以下のような説明がある。
・・・・ これらの像は、平安時代の長寛2年(1164)に絵仏師である長覚房定智(ちょうかくぼうじょうち)が唐本から写した十二神将の図像(通称「定智本」)と非常によく似ていることが確認されています。・・・・

定智本の原本はメトロポリタン美術館他に分蔵されてるらしいが、東博に写本があり以下がその画像と思われる。(違ってたらごめんなさい)
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各尊を比較してみるが、比較対象として定智本と一致してるという宝城坊像や慶派の十二神将などいくつかピックアップしてみた。
(1)伝浄瑠璃寺像(東京国立博物館・静嘉堂文庫美術館蔵): 4躯を除き
定智本と一致するとの解説あり
(2)曹源寺像(神奈川): 先月東博で展示があり見たばかりなので取り上げてみる
(3)興福寺
[東金堂所在](奈良): 定智本とほぼ一致する例
(4)室生寺像(奈良): 今見たい十二神将なので取り上げてみる
(5)宝城坊像(神奈川): 定智本とほぼ一致する例

 図像および名称が完全一致 
 図像と一致、名称は不一致
 図像と見方によっては一致


■子神:
 ど
の組にも図像に一致する像が存在する。
■丑神: 興福寺像・室生寺像は少々異なる気もするが弓を番える雰囲気があるので同体とみなす。
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■寅
神: 特徴的な眺望ポーズはほぼ全組に存在、ただ宝城坊像にはそれらしい像が見当たらない。
: 伝浄瑠璃寺像のうち4躯は図像と一致しない、そのうちのひとつ。拡大図を見てわかる通り、魚の口から腕を通している姿を山本先生は「グロテスク」と表現され、不採用の理由として挙げられていた。
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神: ほぼどの組にも図像に一致する像が存在する。曹源寺像のみ剣の持ち方が若干微妙。
■巳神: 膝に獣の首のようなものを着けており「グロテスク」につき伝浄瑠璃寺像では不採用。その他は持物が異なる像もあるが同体とみなす。
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神: 伝浄瑠璃寺の巳神・宝城坊の5号尊はかなり近いが、その他は一致する像がほぼない。曹源寺像に至っては室生寺像と右手の形が同じというだけで選出してるので相当微妙。
神: こちらも足を獣の首に通して「グロテスク」ながら、伝浄瑠璃寺像では未神が一致する。長らくこのポーズが疑問であったが図像で三叉戟を下に向けて突き刺すように持っていることが判明(※イメージ図を参照)。一方、他の組では似た雰囲気はあるものの全て戟の向きが逆でこれに相当するかは微妙。宝城坊6号尊は上側の右手の向きが図像と異なるものの一番図像に雰囲気が近い。
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神: 「グロテスク」シリーズ第4弾は帯喰と呼ばれる胴部に獣面を着けているもので伝浄瑠璃寺像では不採用。図像のなかでは一番地味な合掌スタイルのせいか興福寺像以外では採用されていない。宝城坊像の中でも合掌スタイルは見当たらず。
■酉神: これもあまり一致する像がない。宝城坊像は剣を持っていないが腕の雰囲気が似てるので同体とみなす。
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神: どの組にも図像に一致する像が存在する。ただし持物が異なる場合がある。
■亥神: どの組にも図像に一致する像が存在する。
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■どれにも一致しない像 
選外① 剣を杖代わりにしてるポーズ。曹源寺像は杖は突いてないが雰囲気は似てる。
選外② 頬杖ポーズ。2組のみと少ない。
選外③ この3像は共通しているが、よくあるタイプのポーズで特徴はない。
選外④ 共通項が・・・・無い。
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■まとめ 
(1)伝浄瑠璃寺像: 9躯が一致
(2)曹源寺像: 9躯が一致(うち3躯は微妙)
(3)興福寺
: 11躯が一致(うち1躯は微妙)
(4)室生寺像: 9躯が一致(うち1躯は微妙)
(5)宝城坊像: 10躯が一致

・・・・という事で伝浄瑠璃寺像は鉄馬童子カウントでは3躯
除いて(山本先生説は4躯)全て一致していた。また、興福寺・宝城坊像がほぼ一致しているという事は改めてわかった。

子・丑・寅・辰・戌・亥の6神はほぼどの組でも存在している事からスタンダードなポーズになっていて、残りに関しては山本先生説のような「グロテスク」とか、他の図像に倣ったなどの理由で不採用になっているものもあると考えられる。曹源寺は鎌倉に近いので武士仕様で戦闘的になってるとか、そんな事を想像してみても楽しい。


さて、これまでも過去のブログで十二神将比較(単純なポーズの比較だが)はさんざん書いてきたのだが、今回のようにオリジナル(図像)と比較するのは初めて。そもそもこれまでは何を元に制作されたのかまでは
あまり興味がなかったので、十二神将に関しては今回の講演で少し理解が進んだように思う。十二神将図像に関しては、この他に醍醐寺本なるものもあるようなので、機会があればそちらも比較してみようかと思う。